過払い金返還請求と弁護士費用

『過払い金返還請求の弁護士費用の相場と弁護士を選ぶ際に注意する点』の取材を受けましたので、そこでの内容をわかりやすくまとめました。

かなり突っ込んだ内容まで書いてあります。
知っているか知らないかで過払い金の回収額、弁護士費用が大きく異なることもあります。

よく読んで、過払い金返還請求の弁護士選びの役に立ててください。
(※ 金額、%などは消費税抜きです)




過払い金返還請求の弁護士費用の相場

まず始めに、過払い金返還請求の弁護士費用の相場についてお答えします。

以前は、過払い金の返還請求をする消費者金融1社につき、着手金4万円という法律事務所もありましたが、今は『相談0円、着手金0円』が相場と言えます。

過払い金調査・過払い金診断なども0円がほとんどです。

ですから、過払い金調査・過払い金診断料、相談料、着手金はいずれも0円が相場ということです。

しかし、過払い金が回収できた場合の成功報酬(報酬金)には法律事務所により少し幅があります。
報酬金は弁護士会で上限が決められており、裁判によらない交渉での和解の場合は回収額の20%以下、裁判をする場合は回収額の25%以下と決められています。
そして報酬金の相場は交渉で和解の場合は14%~20%、裁判の場合はプラス5%の19%~25%となります。

具体的に言うと、過払い金200万円を消費者金融との交渉で回収できた場合の報酬金は、14%の法律事務所なら28万円、20%の法律事務所なら40万円となります。
その差は12万円ということです。

成功報酬である報酬金のパーセントは低い方がよいことになりますが、だからと言ってパーセントが低い方を安易に選ばないでください。

その理由を次の過払い金返還請求の弁護士選びで注意する点で説明します。




過払い金返還請求の弁護士選びで注意する点

以前、過払い金返還請求で問題になったのは弁護士の着服です。
例えば実際は過払い金200万円を回収していたのに、依頼者には「100万円の過払い金を回収できました」とウソを言って、100万円しか渡さないというものです。

こんな弁護士が実際にいるのか?と思った方もいるかと思いますが、過去にNHKのテレビでこうい弁護士が放送され大問題になったことがあります。

どうしてこのようなことが起こるかというと、消費者金融から過払い金として回収するお金は、一旦、依頼した法律事務所の銀行口座に入金されます。
そして、法律事務所はそこから弁護士費用をひいて、残りを依頼者の口座に振り込むからです。

依頼者は法律事務所から送られてきた計算書通りにお金が振り込まれていれば、何も疑問に思わないのです。

ちゃんとした法律事務所は着服などいい加減なことはしませんが、計算ミスなどと言って着服する法律事務所もゼロではないのです。

先のNHKのテレビで紹介された方も、消費者金融から「あなたにはこれこれいくらの過払い金を返還した」という通知がきて、初めて弁護士から聞いた金額と違うことがわかったということです。

ですから報酬金のパーセントが小さいからなどと慌てて飛びつかないことです。

消費者金融から送られてきた取引記録、それを基に法律事務所で計算した引直し計算書などをきちんと見せてくれる法律事務所か確認し、そういう資料を見せてくれる法律事務所に依頼した方がよいです。

また着手金0円と思って相談したら実際は違った。などとならないように以下の点も注意してい下さい。




完済済みは着手金0円だが

過払い金返還請求の場合、着手金0円が相場と先に書きましたが、正確には完済済みの場合は着手金0円であり、まだ返済途中の場合は着手金0円とならないケースもあります。

法律事務所の弁護士費用の注釈などを詳しく見ると「借金を完済した方は」とか「現在返済中の方は」などと書かれていることがあります。
そして現在返済中の方は着手金が1社あたり4万円と書かれていたりします。

具体的に言うと、A社は借金を完済済みでB社はまだ返済途中、という2社の過払い金返還請求をお願いした場合
A社は着手金0円だが、B社は着手金4万円、ということが起こるのです。

もっとも返済中でも着手金0円の法律事務所はありますので、完済済みでない消費者金融がある場合は、この着手金に関する注釈をきちんと確認することをお勧めします。

このように返済途中の消費者金融の場合も着手金が0円なのか違うのかという点も弁護士を選ぶ際のポイントになります。

さらに返済途中の消費者金融がある方は、次で説明する減額成功報酬はいくらかも確認する必要があります。

減額成功報酬はいくらかを確認

現在返済中の消費者金融に対する過払い金の返還請求の場合、実際は引き直し計算後の借金精算ということになります。

具体的には、現在も100万円の借金があり返済中だが、過去に払い過ぎた利息を計算すると80万円の過払があったことが判明した。という場合は、
80万円を過払い金として返還請求するのではなく、現在の借金を80万円減らす。ということになります。

つまり80万円借金が減ったことになるのです。
このような過払い金での減額成功報酬で、報酬金が発生するかどうかの確認もしてください。

減額成功報酬はこれも弁護士会で10%以下と決められていますので、10%より大きい法律事務所はないと思いますが、確認してください。

最近は減額成功報酬は1社2万円、また0円という事務所もあります。

ただし、過払い金として借金精算額を上回る部分に関しては、過払い金返還の成功報酬が適用されるのが一般的です。

具体的には現在も100万円の借金があり返済中だが、過払い金が200万円あり、100万円で借金をゼロにして残り100万円を過払い金として返還してもらった場合は、
借金0円にした100万円の部分は減額成功報酬の10%で報酬金は10万円、返還してもらった100万円は20%の成功報酬で報酬金は20万円、合計30万円ということになります。

少し複雑になってきましたので、ここまでのポイントをまとめますと以下のようになります。

  • 過払い金返還請求の場合、着手金は0円、成功報酬金は回収額の交渉なら14%~20%、裁判の場合は19%~25%
  • 取引記録や引直し計算書をきちんと見せてくれる法律事務所かどうかを確認
  • 現在返済中の消費者金融がある場合の着手金と減額成功報酬金を確認

その他に、裁判を依頼する場合は、裁判手数料、裁判実費(数千円から数万円程度)が発生するのは仕方がないと思いますが、その他に消費者金融1社につき口座管理手数料などをとる事務所もあるかもしれません。 着手金、報酬金以外にかかる費用も確認してください。

最後に最も重要であるがあまり知られていない情報をお教えしますので、よく理解して弁護士を探してください。

和解の場合ほぼ全額が返ってくることはない

過払い金返還請求の多くは和解で解決しています。

和解というのは、消費者金融と依頼者が裁判によらず和解に基づいて、過払い金の返還に合意することを言います。

具体的にお話しします。
例えば、斎藤さんがA法律事務所にX消費者金融に払い過ぎていた過払い金の返還請求を依頼したとします。
するとA法律事務所はX消費者金融に斎藤さんの取引履歴の開示請求します。
そしてX消費者金融から取引履歴を入手します。

次にA法律事務所は入手した取引履歴を基に、引き直し計算ソフトに入力し、過払い金の額を計算します。
過払い金の額が決まったら、X消費者金融に過払い金の返還請求をします。

仮に過払い金の額が200万円だったとします。
A法律事務所の弁護士は、X消費者金融の担当者に、斎藤さんの過払い金200万円を返金するように言いますが、X消費者金融の担当者は、簡単には応じません。

3割の60万円で和解してくれればすぐに支払う。裁判するなら1年近くかかるようになる。などと言ってくるのです。
酷い消費者金融などは最初の提示額が1割以下というところもあるようです。

そこで弁護士は、8割の160万円を半年後に払え、それなら和解に応じるなどと交渉するのです。

そして何割で和解できるかを決め、依頼者に「160万円で和解してくれれば6ヶ月後には支払うと言っているのですが、どうしますか?」などと依頼者に確認を取るのです。

そして弁護士は「ここで和解しないで裁判すると1年近くかかるかもしれません」などということも言ってきます。

結果的に依頼者は「では和解でお願いします」ということになり。
8割の160万円で和解成立。ということになり、過払い金を回収できるようになるのです。

ここで少し、それって損してないか?と思った人もいると思います。
そうです。引き直し計算に間違いがなく裁判をすれば過払い金の返還はほぼ満額の200万円回収できるのですが、実際は8割の160万円で和解というように和解で解決するケースが多いのです。

だったら8割で和解せずに裁判して取り戻したらどうなんだ。と思ったはずです。

次では、この例を基に裁判した場合と和解の場合の違いを説明します。

裁判と和解どちらが有利

さて、裁判と和解どちらが有利か、200万円の過払い金があった場合で考えてみたいと思います

成功報酬20%の法律事務所に依頼し8割で和解した場合の回収額は、160万円-32万円(弁護士費用)=128万円になります。

裁判の場合は交渉よりも5%ほど弁護士費用が高くなりますので、裁判で200万円回収できた場合は、
200万円-50万円-5万円(裁判手数料・実費含む弁護士費用)=145万円になり、交渉より17万円多く過払い金を回収できることになります。

こうみると和解ではなく裁判してもらいたい。と思う方もいるかと思いますが、実はこのことをよく理解しないまま弁護士に依頼する方が多くいます。

一般の方は17万円も増えるのですから多少回収まで時間がかかっても裁判して過払い金を回収してもらいたいと思うでしょうが、実は法律事務所の立場からすると、裁判ではなく和解で了承してくれないかと思うものです。

確かに裁判すれば弁護士が得られる報酬金も増えるのですが、裁判は手間がかかるため、裁判はあまりやりたくないのです。
ですから、8割くらいの和解条件が得られれば、和解を勧めるケースが多くなります。

ただ、あなたが8割では和解したくない、裁判をしてほしい、となった場合に追加でいくらの費用がかかるのかも事前に確認しておく必要があります。

なぜなら、例えば和解を強烈に進めてきて裁判をなかなかしたがらない法律事務所にキレて、あなたが「そんなに裁判をしたくないなら他の法律事務所に切り替える」と言ったとします。

着手金0円だし、完全成功報酬だから、あなたは無料で依頼する法律事務所を変えられると思っているかもしれませんが、 実は、ここまで話が進んでいると8割で和解した場合の成功報酬として弁護士が得られる32万円を請求されることがあるのです。

というか、契約書にそのような途中解約の場合の違約金の条項があります。
ですから、あたなは、一度弁護士に依頼すると着手金0円、完全成功報酬型とはいえ、途中解約すると違約金を払わなければならないことがあります。

ですから、あなたが期間はかかってもいいから裁判して全額回収したいのか、少し減ってもいいから和解で早く回収したいのか、そこをきちんと決めてから弁護士を選ぶことをお勧めします
まとめると下記のようになります。

  • 時間はかかっても裁判して全額回収したいなら、裁判に積極的な弁護士を選ぶ
    そして裁判をしてもらった場合の追加でかかる費用を確認する。
    また、和解に納得できずその法律事務所と途中解約した場合の違約金に関しても確認しておく必要がある。
  • 何割か減ってしまってもいいので早く回収したいなら、和解の実績の高い弁護士を選ぶ
    自分の消費者金融なら何割程度の和解実績があるかを確認しておく。
    また回収期間も何か月くらいかを確認する。

和解で納得するか裁判するかは依頼者自身がきめることですが、和解交渉が始まってから裁判するかどうかを考えるのではなく、あなたの方針を決めてから法律事務所を選んだ方が、後々面倒なことにはなりません。

一般の方が知っているような名の知れた消費者金融でも5割で和解などとごねますし、名前の知られていない様な消費者金融ですと1割回答とか、 「裁判するならやってください、こちらも応じますから」と長期間裁判をしなければならないところもあります。

各消費者金融の最新の和解条件は、ネットで「過払い金 和解 何割」などと検索するとわかります。

弁護士を選ぶのはあなたです。しっかりした情報を得たうえで、弁護士を選んでください。
この情報が、あなたの弁護士選びの参考になれば幸いです。

過払い金返還請求は弁護士にとって儲かる分野

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